予行演習

2020年の東京オリンピックに向けて、講談社は1964年東京オリンピックを舞台にしたアンソロジーを編みました。むろん、編集部の誰もその後に世界を襲う新コロナ禍など想像もしていませんでした。そのアンソロジーに僕も加えていただいたのですが、驚いたのは、1964年当時東京に住んでいたのは執筆陣のうち僕だけで、誰も実体験としての東京オリンピックを持っていなかったことです。さらに、このアンソロジーの編集に関わった者のほとんどが生まれてもいないと聞かされたときでした。
　集められた小説七本のうち、僕の「予行演習」だけが浮いたように脳天気な話でした。