オルファクトグラム ── 井上夢人

週刊読書人 2006年8月4日付

 無から小説を生み出すなんて作家はすごい、と言われたことがあります。とんでもありません。無から有なんて生み出せません。そんな真似はできません。作品には必ず元ネタが存在します。新聞記事だったり、他人が口にした言葉だったり、読んだ本の一節だったり。そのネタをどこから眺めるか、どんな光を当てられるか、どんなふうに変形できるか……それが上手くいったときは嬉しくなります。『オルファクトグラム』を書いたときは「上手くいった」と思いました。
 そんな思いを綴ったエッセイを、週刊読書人に載せてもらいました。